2007年04月05日

音楽図書館職員採用の現状

昨年の全国大会におけるシンポジウム「日本の音楽資料−収集・整理と研究」では、パネリスト以外が発言する時間が取られなかったので、意見を『音楽学』の『研究と報告』に投稿しましたが、掲載していただけませんでした。けれども、ここで私が黙っていては、当日のパネリストの方々のご発言が誤解を招くと思われ、また、音楽図書館員の採用の現状が研究者の方々に知られることもなく、改善は期待できません。会員が意見を述べる場を作っていただきたいという私の要望がここに実現しましたので、データを更新して転載させていただきます。

音楽図書館職員採用の現状

 2005年に開催された日本音楽学会第56回全国大会において、「日本の音楽資料−収集・整理と研究」と題するシンポジウムが行われた。この時、図書館職員養成に関して、パネリストの方々から次のような発言があった。日本近代音楽館の林淑姫氏は、音楽資料収集の課題として資料整理に当たる職員の養成を挙げられた。星野宏美氏は、玉川大学に収蔵されたカサド・コレクションを整理する専門家がいないことに言及された。金沢正剛会長は、国際資料目録(RISM)の国内委員会を組織できないのは専門家がいないからだと指摘された。これだけを聞くと、音楽資料を整理する専門家が不足しているように受け取る方もあるかもしれないが、実態は全く逆で、そのような職に就きたくても求人はほとんどない。その事に全く触れないで上記のような発言をされると、筆者のような万年求職者(2007年4月からは愛知県立芸術大学図書館で勤務する予定)を増やすことになり、無責任ではないだろうか。また、音楽資料の専門家の必要性を感じている大学教員はほかにもいらっしゃると思うが、その多くは、ご自身の大学図書館職員の採用がどのように、どんな基準で行われているのかご存じないのではないか。当日はパネリスト以外が発言する時間は与えられなかったので、職員採用の実態をご報告したい。

 筆者は在学中から音楽図書館への就職を唯一の目標として応募し続けていて、この 26年間の不採用通知はほとんど保存してあるので、各館の募集・採用状況を次に記す。同時に複数の職種を募集した場合、同時期に採用する予定で複数の職種を相次いで募集した場合は1回と数える。実名は出さないでほしいと学会から要請されたので、ご自分の所属機関の図書館についてお知りになりたい方は私に直接お問い合わせいただきたい。

・ A大学: 1992年から非常勤アルバイターを公募するようになり、2007年までに 12回募集している。司書資格を要する方は 35歳まで、必要としない方は年齢制限はないが、補助的な仕事であるためか若い人が採用されている。年齢制限の理由として「本学の事業活動を継続させる上で特に当該年齢層が不足するため」(後述する例外第2項)と記載しており、2006 年に履歴書を持参すると、年齢制限があると言われた。これは長期雇用を前提とした規定で、任期1年の場合には当てはまらないし、35歳まででないと継続できない事業とはどんな事業かと尋ねると、この求人票を職安に提出して通ったのだという回答だった。職安に、短期雇用の場合はこの例外規定には該当しないのではないかと尋ねると、その通りで、受け付けたのは不適切だったと認め、担当者を指導すると言われた。その結果、面接者の最後に追加されたが、やはり年齢を超過した人を採用するつもりはないようである。その後の募集でもやはり同じ理由で 35歳「位」(としただけでも前進か?)までとしている。

・ B大学: 1980年から 2001年までに正職員を5回募集し、「学部卒は 25歳、大学院修了は27歳まで」と一応書いてあるが、実際は大学院修了者はまず採用しないし、応募者は最初に年齢で切られ、優秀な人は敬遠されるという。

・ C大学: 1983年に正職員、1986年から 2001年までパートタイマー18 回、 2004年12月蔵書点検のための派遣、2005年1月嘱託(35歳位まで)、2006年 12月専任(40歳位まで)。同校出身者が有利という人もいる。

・ D大学:2005年3月と 2006年2月アルバイターを図書館専門求人サイトで募集。

・ E大学: 1995年に 1回、 2004年に派遣2回。派遣会社に不採用の理由を尋ねると、経験豊富な人より若いアシスタント的な人が良い、ライバル校出身者は避けたいという回答だった。

・ F大学: 1991年と 1997年に1回ずつ直接募集、2004年と 2005年に派遣計3回。年齢制限は記載されていなかったが、2005年には派遣会社から「職場の年齢構成上、お断りをさせていただく」というメールが来た。

・ G大学: 1993年(分校)1回、2000 年・ 2001年各1回

・ ・H大学:1990年、 1997年、2007年各1回

・ I校: 1982年に1回

・ J音楽資料室: 2002年は財団による募集で、この時は、経歴や音楽の知識によってではなく、上司の指示に素直に従いそうな人を採用したので、現場では困っていると聞いた。2004年から現在まで派遣会社による募集6回。最初には「この仕事を接客業と考えているので、その経験のある人を採用している」という返事が来た。次回は、どの図書館でも閲覧業務の内容はそう変わらないので職務経歴書では強調しなかったが、どこで何年経験していると書き添えたら、「応募書類を検討した結果」という理由に変わった。

・ K音楽資料室: 1989年に1回。このほか、特定の仕事に限定したアルバイターは学生でなくてはいけないとして断られた。

・ L音楽資料室: 1988年に1回。別会社による募集で、委託か派遣か不明。

・ M音楽資料室:職員2回(年不明)、2004年、土曜だけのアルバイター1回。2006・ 2007年、委託会社による募集1回。

 つまり、音楽資料の専門家やそれを志す人が音楽図書館に就職する道は、次の3つの理由からほとんど閉ざされている。

1.  1.公募が少ない(卒業生・縁故者に限定)

2. 2.年齢制限

3. 3.音楽資料の整理には音楽の専門家が必要という認識が採用担当者にない

  2001年に雇用対策法が改正され、第7条には「労働者の募集及び採用について、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えるように努めなければならない」と書かれている(http://www.mhlw.go.jp/topics/2001/0110/tp1001-2.html)。しかし、「年齢指針3」で例外が10項目も認められ、罰則もないため、ほとんど実効がない。

  (1)(2)(4)は終身雇用・年功賃金を実施している場合の規定であるのに、短期契約で年齢に関係なく時給が一定なのにもかかわらず、これらを年齢制限の理由としている求人が多い。 (8)に関しては、30歳とか 35歳を過ぎると図書館業務に必要な体力・視力がなくなるとは考えられない。

 要するに、採用担当者は、年齢の高い人は新しい仕事に適応しにくいとか頑固だとかいう偏見を持っているか、先輩職員より年齢・経験の少ない人の方が管理し易く使い易いと考えているのだろう。だから、音楽の知識や経験より、まず年齢やその大学の事情を優先させる。利用者である教員や学生が音楽資料整理の専門家を希望しても、そういう人を採用できる仕組みにはなっていないのである。そのような希望を音楽学会で表明しても何も変わらない。本当にそれが必要と考えられるなら、ご自身の大学図書館や関係されている音楽図書館の職員をだれがどんな方針・基準で採用しているかを調べ、音楽資料整理の専門家やそれを志す人を採用するように行動を起こしていただきたい。

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posted by webmsj at 10:45| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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